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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)249号 判決 1948年6月12日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

辯護人持田訣の上告趣意第一點は「原審判決は本件三名の被告に對して強盜傷人罪の既遂なりと判示するも右の内強盜の點に於ては被告等が被害者若野直太郎の家に行き當初打合せたる手順通りに被告小山内が棒を持ってすぐに被害者を脅さゞりし時より消滅して專ら逃走する事のみに心を用ひたるものなる本件に於ては強盜の既遂は認定し難きものと信ずる」というにある。

しかし強盜に着手した者がその実行行爲中被害者に暴行を加へて傷害の結果を生ぜしめた以上財物の奪取未遂の場合でも強盜傷人罪の既遂をもって論ずべきである。然らば原審が原判示の事実に對し強盜傷人罪の既遂として被告人等を處斷したのは正當である。被告人等が所論の如く中途で犯意を抛棄し逃走することのみに心を用ひたものであるという事実は原審の認定しなかった事実であるから所論は結局原審の事実認定を非難するに歸着し論旨は理由がない。(その他の上告論旨及び判決理由は省略する。)

よって本件上告は理由がないから刑事訴訟法第四百四十六條により主文の如く判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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